現在、世界的に肥満問題が取り上げられています。
政府が健康対策を行っているにも関わらず、肥満人口は増加する一方です。
ダイエットするためにカロリー制限や痩せるためには筋肉をつけて運動しないといけないなど、色んな情報が蔓延しています。
しかし、このような辛い方法では痩せても数kg程度で、ほとんどの人は、気を抜くとあっという間にリバウンドしてしまうのがいつもの流れです。そして自己嫌悪になってしまう。自分はダメなんだと・・
こんなにみんな苦しんで頑張っているのに、なぜリバウンドするのか?なぜこんなに太るのだろうか?
今回の記事では、肥満の根本原因を突き止め、肥満から脱却するための方法をお伝えします!
肥満とは
肥満とは体重が多いだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことを言います(※厚生労働省 e-ヘルスネットより抜粋)
肥満度の判定には、国際基準であるBMI(Body Mass Index)が使用されます。
BMI=(体重kg)÷(身長m)2で計算します。
僕の場合は、BMI=(61kg)÷(1.65m)2=22.4となります。
2年前の僕の場合は、BMI= (75kg)÷(1.65m)2 = 27.54で肥満に分類されていました。
ちなみに、日本ではBMI25以上からは肥満と定義されていますが、
WHOの基準ではBMI30以上から肥満と定義されています。(下の図参照)
肥満の人口
世界の肥満人口
まずは、世界の肥満状況についてみてみましょう。
下の図は、OECD(経済協力開発機構)が調査した各国の肥満率のグラフになります。(Figure.2)
WHO基準の肥満ですので、BMI30以上の人達の割合を示しています。
ほぼどの国も例外なく、肥満率が上昇していますね。
特に、アメリカやメキシコの肥満率は高く、肥満率が現在約40%にまで達しています。
世界中で肥満が蔓延してきている状態であり、今後も増加の一途をたどっていくような感じですね。
次に、アメリカに注目してみると・・
図1は、2010年にCDC(アメリカ疾病予防管理センター)が発表した肥満の人達の推移です。
みなさん、何か気づきませんか?
そうです。
1970年代後半から急激に肥満の人たちが増えています。
いったい、1970年台に何が起こったのでしょうか?
ここが1つの分岐点のような感じがしますね。
1970年代に入って遺伝子が突然変異して、太る遺伝子などが出現したんでしょうか?
でも、人類の歴史を振り返ると、そんなピンポイントで遺伝子が突然変異するのは考えにくいですよね。
1970年代に入り肥満が急激に増えだした原因とは、工業的に安価に精製された糖が市場に出回り始めたからと言われており、肥満が世界中へと蔓延するきっかけになりました。
間食が取り入れられ始め、1日に食べる回数が4-5回程度と増えていったことも原因と言われます。
図1 アメリカの肥満人口推移
日本の肥満人口
私達が住んでいる日本についてはどうでしょう?
まずは、世界の肥満の定義はBMI30以上ですが、日本ではBMI25以上で肥満と定義されています。
下の図は、令和元年に厚生労働省が発表した国内の肥満人口の割合になります。
令和元年では、肥満の男性はなんと33%を占めており、3人に1人は肥満となっています。 (図1)
特に男性では40歳~60歳にかけて肥満になってしまう人たちが多いです。(図19)
会社で一生懸命家族のために働いているお父さん世代が太ってしまっている印象です。
肥満人口の増加は、世界と比べると緩やかですが、日本でもすでに起きている状態です。
図1 国民肥満人口割合
肥満の原因
これまで、肥満の原因はいくつも挙げられてきています。
①カロリーの摂り過ぎ
②炭水化物の摂り過ぎ
③肉類の摂り過ぎ
④脂質の摂り過ぎ
⑤運動量が少な過ぎる
いったいどれが正解なのか?
これだけダイエット情報があるにもかかわらず、肥満が改善しないので、何か他に肥満の原因があるのでしょうか?
これらのダイエット方法の原理は半分正しくて、半分は間違っていると思います。
たしかに、カロリー・糖・タンパク質・脂質なども大事ですが、それらは肥満の根本的な原因ではありません。これらを摂取することによって、体内で起こる変化が問題なんです。
一言で表すと、肥満の根本的な原因はホルモンバランスが乱れ、体内に脂肪が蓄積しやすくなり、体重の設定値が高くなりすぎてしまうことにあります。
その乱れたホルモンの正体は『インスリン』です!
そしてもう1つ大事なのが、『インスリン抵抗性』です!
インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、同時に過剰な糖分を体脂肪へと蓄積させていく効果もあります。
そのため精製された糖(白米やパンなど)などを摂取すると、体内からインスリンが大量に分泌され続け、体脂肪が蓄積していきます。
そして、その状態が長い間続くと体はインスリン抵抗性を獲得してしまい、血糖値を下げにくくなります。
体は下がりにくくなった血糖値を元に戻そうとしますから、さらにインスリンを分泌します。
インスリンが分泌され続けるので、インスリン抵抗性がさらに強まっていく。
これで、負の無限ループの完成です。肥満が肥満を呼ぶ状態になり、ますます太っていきます。
下の図は、肥満の人と正常な人の血中のインスリン濃度を調べたものです。
肥満の人は正常の人と比べて、インスリンの値が平均的に多く分泌されています。
そのため、インスリンの体脂肪蓄積効果も強く働き、インスリン抵抗性も強くなっていきます。
大事なことなのでもう一度言いますが、
肥満の根本的な原因は、①インスリン②インスリン抵抗性の獲得です!
肥満を改善するためには、この2つの要素を考え、自分の体をコントロールする必要があります!
基礎的なお話ですが、
血糖のコントロールは、ホルモンのバランスを取っている司令塔である視床下部が膵臓に指令を出して、インスリンの量を調整することによって行われています。(下の図参照)
例えば、
食事や間食などで血糖値が上昇すると、視床下部がそれを感知して、膵臓に指令を出します。
指令を受け取った膵臓からはインスリンが分泌され、体内の血糖値が下げ、もとの血糖値へと体を戻そうとします。
ちなみに、数あるホルモンの中で、体内で血糖値を下げるホルモンはただ1つ、インスリンだけなんです。
逆に、体内で血糖値を上げてくれるホルモンは、グルカゴン・成長ホルモン・コルチゾール・甲状腺ホルモンなど多数存在しています。
そのため、低血糖になってもこれらのホルモンがあるために低血糖発作などは起こりません。
でも、高血糖の場合、血糖を下げてくれるホルモンがインスリンしかないので、そうなると・・・
インスリンの効果と肥満への影響
まずはインスリンの効果と肥満に対する影響について話します。
インスリンは血糖値を下げるホルモンとして知られており、膵臓から分泌されます。
食後に血糖が上昇することにより、インスリンが分泌され、体を元の血糖値へ戻すように働きかけます。
この時に処理しきれない余った糖分があると、肝臓にグリコーゲンとして貯蓄されますが、肝臓がパンパンになってくると体脂肪として体の中に蓄積していきます。
特に、精製された糖(白米やパンなど)を摂取することによって、大量のインスリンが分泌されることにより、体に体脂肪がどんどんと蓄積していく状態が起こります。
その他にも、インスリンはレプチンの作用を阻害するとも言われています。(下の図参照)
満腹因子であるレプチンは脂肪細胞から放出され、視床下部に作用して、食欲を抑制する作用を持っています。
しかし、インスリンによってレプチンの作用が阻害されると、食欲も止まらない状態に陥り、自分の意志とは関係なく、どんどん食べ物を食べてしまうことが起きます。
食べても食べてもお腹が満たされないのは、レプチンの作用が阻害されているからです。
また、大量のインスリンが分泌されてしまうと、高血糖状態から低血糖状態へと急降下する状態(血糖値スパイク)が起こるために、食後の眠気・集中力低下・うつに似た症状などが起こり、日常生活への支障もきたすようになります。
その他にも、インスリンは視床下部の体内ホルモンバランスを調整している部位に作用して、元の体重設定値を上げてしまうので、さらに太りやすい体になってしまいます。
せっかく頑張ってダイエットをしてみても、体重の設定値の基準値が高いままであると、体は勝手に元の体重に戻ろうとします。(下手をすると前の体重より太ることさえあります。)
これがリバウンドの正体です。
インスリンがすべての元凶であるにもかかわらず、ダイエットをしたのにまた太ってしまったと自己嫌悪に陥り、友達からは『あんたの意志は弱いわね』『また失敗?』などと傷つけられる。
本当はすべて自分の意志とは関係なく、体が元の設定体重に戻ろうと当たり前の生体反応を示しているだけなのに・・・
無理なダイエットは失敗します。だって、体はただ元の状態に戻ろうとしているだけなのですから。
リバウンドをしたくなければ、インスリンの役割を理解し、自分の体をコントロールしましょう。
インスリン抵抗性の獲得と肥満への影響
インスリン抵抗性を獲得すると、インスリンの効果が弱くなるために、体はより多くのインスリンを分泌します。
それによってさらに肥満へと発展するのですが、なぜインスリン抵抗性を獲得しはじめるのか?
理由は2つあります。
1つ目の理由として、精製された糖や加工食品などを取り、間食などをして慢性的にインスリン分泌が多く出続けていると、インスリン抵抗性を獲得していきます。
医療業界ではよく聞く話ですが、細菌を殺す抗生物質を投与するとほとんどの細菌は死滅します。
しかし、抗生物質を投与し続けていると、中には生き残る細菌もいており、それらが薬物耐性菌となり、抗生物質が効かなくなって死に至ることがあります。
これと同様にインスリンも慢性的に出続けていると、やがて体はインスリン抵抗性を獲得し、血糖値が下がりにくくなってきます。
そうすると、体はさらに血糖値を下げようとインスリンの分泌を増やしていきます。
2つ目の理由として 、1970年台後半から精製されるようになった果糖が原因となっています。
果糖が出現し始めてから、それに続くようにして肥満の人口が増加していっています。
▲:果糖ぶどう糖液糖 ■:添加糖 ☓:肥満の割合
ちまたでは、果糖はGI指数(グリセミック指数)が低く、血糖値を上げないと言われています。
血糖値を上げなければ、インスリンは分泌されませんからね。
確かにそれは間違ってはいません。
インスリンが分泌されなければ、太る心配はないと考えがちですが、果糖はインスリン抵抗性を獲得しやすいのです。
それはなぜか?
グルコース(ブドウ糖)は体内のあらゆる部位で利用することが出来るのに対して、果糖を代謝できるのは肝臓だけになります。
グルコース(ブドウ糖)であればグリコーゲンとして一時的に他の部位(肝臓・筋肉)などに貯蔵することができますが、果糖を摂取してしまうと肝臓に直接負担がかかってしまい、肝臓にはあっという間に脂肪が蓄積してしまいます。
果糖は肝臓を直接攻撃するミサイルのようなものであり、肝臓に脂肪が蓄積するとインスリン抵抗性が獲得されてしまうので、血糖値を下げようとインスリンがより多く分泌されてしまうのです。
そして、インスリン抵抗性が長年に渡って続けば続くほど、体内のホルモンバランスを整えても
インスリン抵抗性が中々良くならず、肥満から脱却することがますます困難になります。
なぜ、果糖がこれほどまでに世間に浸透するようになったのか?
それは、果糖が工業的に安価に精製された加工しやすい糖だからです。
その他の理由として、血糖コントロールにとても大事な食物繊維を取り除くことにより保存期間を長くし、おいしくない食品がおいしくなる効果もあるために使用されることが多いです。
家にあるもので、食物の裏に書いてある成分表を一度みてみてください。
甘いもの・ソース系・ドレッシングなどの色んな食べ物に【果糖】という文字が入っていると思います。
果糖:ブドウ糖果糖液糖,果糖ブドウ糖液糖,高果糖液糖,異性化糖など
肥満はなぜ悪い?
肥満になると様々な疾患を起こすと言われています。
詳細は省きますが、肥満のせいで起こることを下に列挙します。
①糖尿病
糖尿病になると、AGEs(Advanced Glycation End-Products;終末糖化産物)が作られ、急速に老化が進んでいきます。肥満と糖尿病は密接に関連しています。
②高血圧
③心筋梗塞・脳梗塞などの血管障害
④認知症
⑤乳癌や大腸癌などのリスクがあがる
⑥睡眠時無呼吸症候群
⑦関節痛
これらはどれも生活習慣病に深く関係しており、生活の質を低下させる原因となります。
肥満はただ太っているだけのように思われがちで、症状が強く現れるわけでもないので、
本人は危機感も実感しにくく、何年も肥満を放置してしまう傾向にあります。
よく糖尿病は『silent killer:静かなる殺し屋』と言われますが、肥満も全くそれと同じです。
肥満の対処法
肥満の根本的な原因は①インスリン②インスリン抵抗性の獲得でしたね。
そのため、肥満の対処法としてはこれらの要素を考えながら行う必要があります。
これから痩せようと思っている人やダイエットに失敗している人は是非、以下の方法を試してみて下さい。
肥満を解決するために以下の3ステップを踏んでみて下さい。
STEP.1 精製された糖の摂取や精製された穀物を極力減らす。(インスリン分泌を下げる、インスリン抵抗性の改善)
当たり前ですが、砂糖や果糖などの精製された糖分の摂取を減らしましょう。
自分がいったい何を食べているのかを意識したり、おやつに甘いものなどは極力控えるなど注意してくことも大事です。
特に果糖は砂糖を摂取するよりも倍速で太りやすい体になりますので、極力控えるほうが無難ですが、
どうしても食べたいよという方は、出来る限りナッツや野菜などの食物繊維を多く含む食事をするように心がけましょう。
カカオが70%含まれているダークチョコレートは、血圧やインスリン抵抗性を改善することが言われているので、甘いものの代わりにそれらを摂取するのもいいと思います。
朝食のパン・シリアル・ベーグル・サンドイッチ・甘いヨーグルトなども精製された物ですので、極力控えたほうが無難です。
STEP.2 食物繊維をもっと食べる (インスリン分泌を下げる)
食物繊維には炭水化物によるインスリン分泌を減少させるために、肥満の予防が可能です。
その他にも、満腹感を得ることができて食事の量を減らすことができたり、便通の改善にも効果があります。
和食を中心に食べている日本人でも、食べている食物繊維の量は推奨されている量よりもはるかに少ないです。
野菜,果物,納豆,オートミールに加えてナッツ類も食物繊維が豊富なので、積極的に摂取しましょう。
海藻類,コンニャクも食物繊維が豊富なので、摂取すると良いと思います。
STEP.3 ファスティング【断食】 (インスリン抵抗性の改善)
ほとんどの人がどんな食べ物を摂取すればいいのかばかりに気を取られています。
食べない時間を作ることに関して誰も議論をすることはありません。
インスリン抵抗性がつくとそれに対する反応としてインスリンの分泌量が増え、負のループを作り、それがさらにインスリン抵抗性を強める原因となります。
このインスリン抵抗性の悪循環サイクルを断ち切るためには、インスリン値が極端に低くなる時間を繰り返し作ることが必要です。
ほとんどすべての食べ物はインスリンの分泌を促すために、インスリン値を極端に下げるためには『まったく何も食べない時間』を作ることが重要です。
つまり、『ファスティング』です。
ファスティング(断食)といっても、何日何ヶ月という本当の断食とかではなく、16時間から1日程度空腹の時間を設けることくらいでも十分効果があると思います。
ファスティングの方法に関しては、この記事で説明しているので、参考にして下さい。
下の図を見てみて下さい。
間食をした場合、低インスリン値になるときは就寝中のみであり、かつ低インスリン値になっている時間も短くなってしまいます。
間食をするとインスリン値自体もそれほど低くならないです。
この状態であると、インスリン抵抗性を改善することも出来ず、インスリンは分泌されたままであるため、食事制限ダイエットをして苦しい思いをしても、インスリン抵抗性は改善しません。
出来る限り、食事の回数は減らし、インスリンの値をコントロールしていくことが極めて重要です。
まとめ
長くなりましたが、以上が【肥満大国日本 大人編】でした。
肥満の根本的な原因は、ホルモンバランスの崩れからきています。
インスリンとインスリン抵抗性を理解し、少しでもみなさんが肥満から解放され、健康で豊かな生活を送れるますように。
次回は、問題視されてきている子供達の肥満についてもとりあげていきます。
では、また!!
参考書籍
今回の記事の作成にあたって参考にさせていただいた本を紹介します。
まだまだこの記事では書ききれないほどの重要な情報がたくさん載っています。
興味のある方は、是非本書を手にとって読んでみて下さい!
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