今回は、子供達の肥満について取り上げます。
少子高齢化社会である日本で、子供達の将来の健康を考えることはとても大事です。
子供達の肥満の原因や対処法などについて、学んでいきましょう
子供の肥満人口
令和元年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)をみてみます。
子供の肥満は、平成18年以降は減少傾向であるものの、特に男子において令和元年あたりくらいから肥満児の割合が再び上昇してきています。
学童期・思春期における肥満傾向児割合は、男子で9-11%,女子では7-9%であり、10人に1人くらいは肥満児のイメージです。
(平成18年からは肥満度計算方法が変更されたために、平成17年と数値を単純に比較はできません)
子供の肥満の原因
子供の肥満の原因はいくつも考えられます。
①精製された糖の摂取・間食の取りすぎ
②親の知識不足・教育不足
③生活習慣の乱れ(睡眠不足・朝食の欠如・不規則な起生就寝時間など)
④早食い・ながら食い
⑤運動不足(TVやゲームなどをする時間(スクリーンタイム)が長い)
⑥相対的貧困(日本の6~7人に1人は、まともな食事や教育が与えられていない現状があります)
⑦二次性肥満(Cushing症候群,Down症,Prader-Willi症候群など)
⑧親からの遺伝(諸説あり、約30~70%が遺伝からくる肥満と言われています)
特に気をつけていきたいのが、①~③の原因です。これらが子供の肥満に大きな影響を与えています。
子供の肥満はなぜ悪い?
肥満は糖尿病と同じで【静かなる殺し屋:silent killer】と呼ばれ、気づかないうちに体をボロボロにしていきます。
大人と同様に子供の肥満も百害あって一利なしと言われます。
なぜかというと以下のような様々な状態を引き起こすと言われているからです。
①高血圧,脂質異常症,2型糖尿病などの生活習慣病の発症
②呼吸障害(閉塞性睡眠時無呼吸症候群,肥満低換気症候群など))
③早期動脈硬化(子供でも起こりえます)
④非アルコール性脂肪性肝疾患(将来的に肝硬変や肝癌などの発症母地となる)
⑤運動器疾患(大腿骨頭すべり症,下肢の変形など)
肥満児では性格も消極的になり、集中力の欠如や癇癪を起こしやすくなります。
それに加えて、集団生活での不適応や自己主張が少なくなり、マイナス思考や劣等感も抱くようになります。
⑥黒色表皮腫,月経異常,腎障害
⑦精神的・心理社会的問題(いじめ,不登校など)
肥満であることは身体的に障害があるだけでなく、精神面でも大きな障害をもたらします。
そのため、肥満は改善していかないと日常生活などに大きな影響を及ぼし、生活の質が大幅に下がってしまう原因となります。
早期発見早期治療
特に子供の場合は早期発見早期治療がとても重要です。
なぜなら、子供の時の肥満は大人になっても続くことがあると言われてきているからです。
特に、思春期に肥満の状態があると大人になっても肥満になる確率は70~80%と言われています。
そして、子供の肥満の早期発見早期治療がとても大事な点として押さえておきたいのが
子供と大人の場合では太るパターンが異なることです。
大人の場合は、肥満細胞自体が大きくなって太っていくのに対して
子供の場合は、脂肪細胞が増殖して肥満となっていきます。
一度増えてしまった脂肪細胞の数は元に戻りませんので、大人になっても脂肪細胞の数が増えたままになってしまい、大人になった時により多くの脂肪が蓄積していってしまいます。
対処法
STEP.1 まずは自分の子供が肥満なのかどうか現状を把握しましょう.
【標準体重計算式】
【年齢別肥満度表】
まずは標準体重を計算してから、肥満度を求めていきます。
例えば、7歳の男の子で身長120cm体重30kgであれば、
標準体重=0.513×120-38.878=22.682となります。
次に肥満度の計算は以下の式で求められますので、
肥満度=【実測体重(kg)-身長別標準体重(kg)】/身長別標準体重(kg)×100(%)
肥満度=(30-22.682)÷22.682×100%=32.263となります。
上の肥満度の表にあてはめてみると、今回の場合32.263ですので、中等度肥満となります。
自分の子供が肥満にあてはまるかどうか一度チェックしてみて下さい。
STEP.2 両親の勉強・子供への教育
肥満を改善するためには、両親の勉強と自分の子供達への教育がとても重要です。
特に自分の子供となると、『少し太っているだけ』『自分の子供だけは違う』など自分達の都合のいいように解釈をする傾向があります。(正常性バイアス,確証バイアス)
肥満度の表で肥満以上に分類されてしまった場合は、そのことを素直に受け入れて、肥満に対する知識を深めていくことが大事です。
両親が太るような食事や生活習慣を送っている場合は、子供は同じように太りやすくなってしまいます。
子供は親の行動や発言をよく聞いており、特に言葉や行動は親の真似をします(子は親を映す鏡)
子供にとって小学生くらいまでは学校の先生よりも両親が一番の先生ですので、しっかりと両親が勉強して、自分の子供に教えていってあげて下さい。
STEP.3 生活習慣の改善
精製された糖の摂取を制限し、間食を控え、3食しっかりと食べて早寝早起きをする生活を心がけましょう。
食事内容について・・・
【肥満大国日本 大人編】でも言いましたが、精製された糖の摂取は子供の肥満を起こす主な原因であり、出来る限り制限してあげましょう。
特に果糖(ぶどう糖果糖液糖,果糖ぶどう糖液糖,高果糖液糖など)が含まれているお菓子や清涼飲料水などは、白米やパンなどよりも倍速で太りやすいので注意が必要です。
睡眠時間に関して・・・
睡眠時間の短い人では食べることを抑制してくれるレプチン値が低下し、食欲を増幅させるグレリン値が上昇することがわかっています。
そのため、睡眠時間の短さが肥満の発症につながっていると言われているので、
幼児期では10時間半以上,学童期では8時間以上の睡眠時間を確保しましょう。
朝食に関して・・・
大人の場合は健康面やダイエット面から16時間断食を僕は勧めているために朝食は抜いたほうがいいですが、子供の場合は朝食をしっかりと食べたほうがいいです。
子供の場合、朝食を抜くほうが肥満の確率を上げたり、1人で朝食を食べる子の方が肥満体型が多いという報告があるためです。
ちなみに、ばんたろう家では僕が断食をしているために朝食はほとんど食べませんが、子供が朝食を食べる時には横にいて一緒にいただきますといったり、有り難いことに奥さんが協力してくれて一緒にご飯を食べてくれています。
朝食を毎日きちんと食べることは、学力にも大きな影響を与えています。
下の図は文部科学省が出している【全国学力・学習状況調査】です。他の年度でも同じことが言えますが、平成30年度(2018年)では朝食をきちんと取っている子供の方が学力がいい結果となっています。
そのため、肥満予防だけでなく、学力の向上にも朝食を食べることはいいことですので、積極的に朝食を食べましょう。
STEP.4 TVやゲームなどのスクリーンタイムの制限
今の日本は『夜ふかし社会』です。
TVが普及し、家族揃って夜遅くまでTVをみたり、子供が塾から夜に帰宅し、遅い時間に夕食をとり、その後も勉強をしたり、スマホやyoutubeなどをみています。
こうした夜ふかしも肥満しやすい習慣であり、夜遅いために朝早く起きれず、朝食を食べる時間もなく学校へいく。そして、また夜遅くに寝るという負の無限ループに陥っています。
肥満になる習慣が身についているだけでなく、朝食も食べないので、学力にも影響を与えている可能性があるために、生活習慣を見直していきましょう。
TVやゲームなどを2時間以上行っている群では、しない群と比べて1.9倍程度肥満の頻度が違うことが報告されていますので、出来る限りTVやゲームなどは2時間以内にとどめましょう。
STEP.5 運動習慣を取り入れる
小児肥満症診療ガイドライン(2017年)では、肥満予防のために中-高強度の運動を1日あたり少なくとも合計60分は行うことが必要と書かれています。
中強度の運動とは、おしゃべりしながら少し息があがるくらいの運動と言われており、速歩きや水泳などがこれらに含まれています。
TVやゲームなどのスクリーンタイムを減らし、運動習慣を取り入れていきましょう。
ワンポイント!
・小さな目標や日々の習慣を決めていく!
大人のダイエットと同じで、いきなり高い目標値を設定してもすぐに挫折してしまいます。
1ヶ月程度で0.5kg減らしたり、間食は1日に2~3回までなど、短期的に無理のない範囲で達成できるような目標を設定して、コツコツとやっていきましょう。
日々の習慣として毎日体重計に乗って体重を測り、その後に両親とラジオ体操をするなど自分たちでも出来そうな習慣を決めていくことも大事です。
特にダイエットにも効果的な運動習慣を取り入れて、習慣化(ルーティン化)していけば、毎日継続して行うことが出来るようになりますので、成功確率が高まります。
・子供はとにかく褒める!!
子供が目標を達成できた場合には、思いっきりその子のことを褒めてあげて下さい!
とにかく褒めて褒めて褒めちぎりましょう!
目標達成できなかったとしても『なんでこれができなかったの!?』『頑張りが足りないからよ!』など出来なかったことを言うのではなく、『ここまで出来たのね。よく頑張ったね。えらいね。』と言ってあげてください。
そうすると子供の自己肯定感もあがり、次も達成できるように頑張ってくれますので。
褒めてあげると子供達はすごくいい顔で笑ってくれますよ。自分も幸せを感じますよ。
まとめ
子供の肥満は将来に渡って健康を損いますので、早期発見早期治療がとても重要です!
少子高齢化社会となっている日本で子供達の将来はとても大事ですし、少しでも肥満の子供が減り、健康で豊かな人生を送ってくれることを願うばかりです。
では、また!!
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